〈カビコラム16〉食品取り扱い施設への侵入リスク②

前回は、カビの発生源と侵入経路について触れました。カビの性質を知れば知るほど侵入をゼロにすることは極めて困難で、また一度発生したカビを完全に根絶し、再発を防止することも容易ではありません。

にもかかわらず、実際の食品取り扱い施設の現場では、発生たカビに対する対処しか行わず、再発防止の対策を怠ってしまう状況が多く見受けられます。多くの施設が、対処に大きなコストをかけたわりに、早期にカビが再発してしまう(つまり成功しない)結果に終わってしまいます。そのため、厳格な検査をクリアして出荷される製品にもかかわらず、事故がゼロにはならない、という事態が跡を絶ちません。

そこで今回は、カビを発生させないための管理について解説します。

◆カビ対策に必要なことは、まず現状把握

食品取り扱い施設の多くは、HACCPといわれる衛生管理の手法を導入しています。HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、食品などの事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因 (ハザード)を把握したうえで、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程で、それらの危害要因を除去・低減 させるために重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する、国際的に認められた管理方法で、各種団体による認証制度もあります。

カビの侵入を許し、発生を確認した場合、発生箇所のみの調査だけでは本質的な改善にはつながりませんので、HACCPの衛生管理手法に基づいて対応することが求められます。それにはまず、現状把握が必要です。

◆カビ対策における現状把握のポイント

現状把握を行うポイントを以下に紹介します。

①リスクの高い箇所はどこか

HACCPでも用いられますが、リスクの高い箇所をあらかじめ把握しておくことです。それはカビ対策でも同じく必要とされます。製造過程などで混入する危険性を、生息するカビの性質を考慮して、改めて見直す必要がある場合もあります。

②建物にカビがはびこる環境が整っていないか

ここでは、温度、湿度、また日々の清掃状況などの検証が必要になります。生産フローにより温度や湿度が調整されることを余儀なくされる環境では、現場の清掃方法や頻度、使用する薬剤を見直すことで、改善できるこ ともあるかもしれません。

現在、殺菌剤として主流の塩素系洗剤やアルコールなどが広く使用されていますが、洗剤の滞留時間を正しく守ることや、殺菌剤の使用ならば前洗浄をしっかりと行っておくなど、適正な使用方法が行われなければリスクを取り払うことができません。

③若いカビがすでに生息している可能性はないか

カビは侵入時、目に見えず、目視で確認できたものは時間をかけて生育した後の姿であるため、室内空気を循環させる設備がある場合は、若いカビを施設中にばらまくことになるかもしれません。

繰り返しますが、目の前のカビを消すことだけでは不十分です。カビを目にしたときにはすでに後手に回っているという認識をし、現状を見つめ直すことを怠ってはいけません。