〈カビコラム17〉食品取り扱い施設への侵入リスク③

◆清掃とカビ処理

前回、前々回と、外部から施設内に侵入するリスクをできるだけの対策について述べました。さらに、施設内の状況を正しく把握し続けることが重要になりますが、それでも完全な無菌状態にすることは困難です。今日は、行われるべき清掃とその課題について考えていきたいと思います。

食品取り扱い施設は、温度、湿度などが生産に適した条件となっていて、常に一定で維持されています。湿度と温度の好適な環境が続くなかで、カビの生育を抑えることは非常に困難ですが、カビの生育に必要なもう一つの条件である「栄養素」を取り払う、それが清掃であると考えます。とはいえ、コストや時間の制約から、施設内での清掃にかける時間が極端に短いこともあるでしょう。清掃が不十分であると、いくら優れた除菌剤などを使用してもカビの事故リスクは小さくなりません。

◆間違えてはいけない清掃の目的

現在、清掃を行っていない事業場はないと思いますが、目的がズレてしまうことにより、清掃時間の短縮や、清掃回数を減らしてしまうということが起きていることが考えられます。

一口に「清掃」というと、目の前の汚れが見えなくなることが目的とされがちです。そのため、見た目がきれいであれば手を抜いてしまったり、清掃対象から外されたり、そういった現状があると思います。

清掃の目的として一致させたいことは、毎日発生する危害要因を取り払うことです。これまでも触れてきましたが、危害要因になるものは目に見えているものだけではありません。食品残渣などの汚れにおいても、目で見えなくなっていることで完了しがちであり、細菌や若い真菌のように、目で確認することができないリスクが常にあると考え取り払わなければ、真の意味で清掃をしたことになりません。

課題は2つあります。1つは、環境に見合った清掃方法と清掃した結果の達成度が定まっていないことです。細菌や真菌の特性を知識として身につけ、なおかつ事業場内の機械設備や洗浄躯体の知識も持ち合わせていなければ、適正で効果的な清掃手段を見いだすことができません。洗浄する方法を誤ってしまうと、洗浄躯体を傷つけてしまい、汚れが定着しやすくなります。そうなると、衛生環境を保つことが、日に日に困難になっていくかもしれません。

もう1つは、適正な清掃方法と達成度の共有です。管理者が適正な清掃を理解していても、作業者にはそれがいきわたっていないことを耳にします。衛生意識と施工技術を、作業者まで共有するための教育は、時間と労力を有します。多くの事業場で、そういった課題を抱えているのではないでしょうか。