〈カビコラム20〉汚れに合わせた清掃方法③ −汚れと洗剤−

洗浄の効率化

効率的に洗浄を行うということは、使用するエネルギーと時間を削減し、目標を達成することだと考えます。

洗浄を効率的に行っていくには、大きく分けて2つの要素(作用力)が必要になります。

◆物理的な力の活用と留意点

一つ目は物理的な作用力です。
主に機械などを用いたもので、高圧洗浄機の圧力、ポリッシャーの摩擦力(研磨)、熱、流動力など、物理的作用力には多くのものがあります。

使用する環境や素材に合わせて適切な選択をしなければいけません。

◯ 高圧洗浄機 研磨作業

高圧洗浄機や研磨作業の物理的な力は、強力にする程付着する汚れは除去しやすくなりますが、洗浄する躯体にまで影響を及ぼす可能性があるため、環境に見合った性能(力)に調整する必要があります。

躯体を傷つけてしまうと、素材に小さな凹凸が生まれ、より汚れが付着しやすい状況をつくり出す恐れがあります。

◯ 熱作用力

熱作用力は、洗剤を併用することで油汚れ対して高い効果を発揮しますが、熱により硬化してしまう汚れ(タンパク質など)に対しては不向きな場合もあります。

◆化学的な力の活用と留意点

二つ目は化学的な作用力です。
主に洗剤や酵素、酸、アルカリを用いたもので、汚れにより向き不向きがあります。

適した選定を行わなければ効率は上がらず、仕上がりも目標に達成しません。

また、化学的な作用を及ぼす洗剤は、間違えた選択をしてしまうと、汚れのみならず、洗浄する躯体へ影響を及ぼす可能性があります。

事業場では多くの洗剤が使用されていますが、使用する側が理解を深める必要があると感じます。

製品により特性が変わりますが、事業場で使用されている洗剤を分類すると、下図(図1:洗剤と汚れ)のように性質と汚れには向き不向きが見えてきます。

◯ 中性洗剤を使用する場合

躯体影響が低いことから、広い範囲で簡易的に使用することができます。
軽度の汚れならば、物理的作用力が小さくても対応できますが、重度の油汚れには効果が不十分であり、逆に物理的作用力は大きなものが必要になります。

結果的に、総合的な使用エネルギーは大きくなってしまうことがあります。

◯ 強アルカリの性質を持つ洗剤を使用する場合

重度の油汚れなどに効果を発揮しますが、汚れ以外にも影響を及ぼす可能性があるため、使用する躯体や周囲の環境を考慮しなければなりません。

スケールや錆などの汚れには向いておらず、必死に擦り落とすことになるかもしれません。

◆汚れと素材に適した「手法と洗剤」の選定

日常の洗浄を行う際、施工者が汚れを正しく判断し洗剤を選定することができれば、物理的作用力を小さくすることができるかもしれません。

「この作業場にはこの洗剤」
「この機械にはこの洗剤」

という固定概念を改め、2つの作用力(物理・化学)を有効に活かすことで、時間と消費するエネルギーを削減することができ、あらゆるリスクの低減にもつながるかもしれません。