〈カビコラム21〉居住空間のカビ① −対策の前に実施する“視える化”−

居住空間に潜むカビのトラブル

これまで食品取り扱い施設などの異物混入リスクの観点から、真菌(カビ)の除去方法や清掃方法などに触れてきました。

近年は、真菌によるクレームが、食品取り扱い施設だけではなく、事業場や住宅、福祉施設などでも多く聞こえるようになりました。

今回からは、居住空間に潜むカビのトラブルに焦点を当てていきます。

◆ 高まる衛生管理意識

流行する新型コロナウイルス感染症の影響も重なり、居住空間内の衛生管理意識が非常に高まっています。

そんな中近年では、
「カビ=美観を犯す厄介者」という認識だけではなく、人の健康への影響(真菌症)が明らかになってきたことにより、根本的な対策が求められるようになってきました。

室内にカビが存在するのかどうか、目視で確認できるほどの発育や、いわゆる「カビ臭い」と言われるほどの特有の臭気が感じられれば環境が劣悪なことが分かります。

初めは壁の一部にできた「カビかな?汚れかな?」と思っていたものを放置してしまうことで、気づいたときには室内の至る所で目視で確認できるレベルまで発育してしまいます。

中には家具や衣服、バックなどに飛散し回復困難になってしまうこともあります。

目視で確認できた際は、早急に対処するしかありません。

しかし、それほど見た目や臭いは感じられないものの、空中浮遊菌を採取すると、かなりの数の真菌が検出されることがあります。

例えば、夏期になると咳や痰、頭痛、発熱などを発症する場合、これは居住空間内に浮遊する多量の真菌を吸い込むことによって生じる一種のアレルギー反応かもしれません。

症状に対処するのではなく、健康被害を未然に防ぐための「日常的・定期的な対策」を講じることが大切です。

◆菌の採取方法カビの視える化

衛生環境を維持するにあたり、各事業場によって有効な検査方法が異なってきます。

食品取り扱い施設では、異物混入リスクの低減のため、落下してくる菌を計測する手法(落下菌測定法)が有益とされています。

業務工程の中で、製品に異物が混入する危険性の高いポイントを洗い出し、菌の採取が行われています。

こうした落下菌の検査は、日常に近い状況下で検査できる点にメリットがあります。

居住空間では、有益な検査方法が異なってきます。

長い時間を過ごす居住空間では、食品取り扱い施設のようにゾーン分けなどはされておらず、人の出入りも自由に行われています。

そのため、菌が空気中に漂ったり、家具や壁面などに付着したりと、常に菌が飛散し続ける環境下にあるため、現状を知るには対象物の付着真菌の採取や空中浮遊真菌の採取が効果的です。

各検査で採取した菌を培養し、生存する菌の個数や※コロニー数(CFU/㎥)を算出することで、最終的に現状を「数値」で確認することができます。
※ CFU:Colony Forming Unit(コロニー形成単位)と言い、細菌検査で用いられる単位。細菌を培地で培養し、できたコロニー(集団)数のこと。

カビへの対処法・対策方法は、数値化を含め、現状を”視える化”し、正しく把握した上で構築するべきでしょう。