〈カビコラム22〉居住空間のカビ② −カビ臭の元を探る方法とは?−
目視確認できないカビ
住宅内のカビのトラブルは、居住空間内の様々なところで見受けられますが、やはり一番悩みの種になっているのがお風呂場を中心とした水回りのカビです。
想像しやすい場所ですが、毎日使用することから”きれいに保ちたい”と思う場所ではないでしょうか。
目に見えてカビが確認できることが多く、居住者自身でもカビを処理した経験があるかと思います。
次に壁(ビニルクロスや塗装面)や和室の畳や木部。
こういった箇所にカビを確認し、「処理方法がわからない」と問い合わせをいただくお客様もいます。
冬場に発生した結露が原因となり、壁紙にカビが発生するトラブルが増えています。
また、湿度を調節するために利用した調湿性能を持ち合わせた仕上げ材などにカビが発生し、トラブルになるケースもあります。
そんななか、近年増えているのが、「なんだかカビ臭いのだが、どこにカビが発生しているのか分からない」というお問い合わせです。
“カビ臭い”と感じられる場合、どこかにカビが増殖しています。
また、かなり生育が進んでいる可能性もあります。
今回は、「目視確認できないカビの元を探る方法」についてご紹介します。
◆ カビ臭の原因を探る
臭気の感じ方には個人差があるため、異常であるかどうかの判断は難しい場合もあります。
そのため、臭気が感じられた場合はどこかに原因があると考え調査をする必要があります。
調査を行うとき、“定性的な判断”として、まずは目視にて現状を把握します。
目視で確認できるカビが居住空間内に見受けられるかを確認し、発見できる場合は是正も行いやすいです。
しかし、厄介なのが壁裏や天井裏、床下などにカビの増殖を発見した場合です。
このようなケースは、居住者自身での是正はまず不可能と言えるでしょう。
床下でカビを発見した場合、参考に空気中のカビを採取し、各箇所のコロニー数(CFU/㎥)※を計測・比較することで“定量的な判断”を行います。
※ CFU:Colony Forming Unit(コロニー形成単位)と言い、細菌検査で用いられる単位。細菌を培地で培養し、できたコロニー(集団)数のこと。
計測は室内で1か所、床下で1か所、外部で1か所という具合に採取すると、比較する上で十分な判断材料を得ることができます。
とある物件で計測を行った際、このような結果を得ることができました。
◉室内 ⇒ 20 CFU/㎥
◉外部 ⇒ 15 CFU/㎥
◉床下 ⇒ 119 CFU/㎥
以上の数値を考察すると、以下3つの結果に行き着きます。
①室内においてカビが検出されているが、外気の流入も考慮すると、許容範囲の数値である。
②室内と外気との差があまりないことから、室内が発生源である可能性は低い。
③床下にかなりの菌が浮遊している。
空気の流れにより若干の誤差を生じることがありますが、床下は外気と比べて約8倍の数値となっています。
つまり、外気からの流入よりも床下内部に発生原因がある可能性を示しています。
実際に、床下の内部を調査するとカビを発見することができました。(写真)
さらに、床面に水跡を確認することができ、何らかの原因により床下内部で増殖していたのです。
循環設備などを設けている空間では、床下や天井裏に確認できたカビを家中にばら撒いてしまうリスクも抱えています。
カビ臭いと感じたとき、目視できるカビが室内で発見できない場合は、床下や天井裏、壁裏なども確認する必要があるでしょう。