〈カビコラム26〉浴室のピンク色の汚れの正体

「ピンクカビ」とは何か?

今回は、水回りに多く見受けられるピンク色の汚れについて触れていきたいと思います。

浴室の床や隅部分、食器の乾燥かご、トイレの喫水線などにも現れたり、歯ブラシホルダーなど、水回りでよく見受けられる、厄介なものです。

一般的に「ピンクカビ」などと呼ばれるこの汚れに悩まされている方も多いかと思います。

「これは何ですか?」
「出てこないようにできますか?」

とお客様からもよく問い合わせを受けます。

◆ 汚れの正体は「酵母菌」

薄いピンク色の汚れは、色味からすると石鹸カスが残っていると思われることが多いです。

しかし、水で流しても泡立つことなく、流れはしない汚れです。

細菌類の繁殖も否めませんが、有力視されるのがカビの仲間である酵母菌の一種「ロドトルラ」です。

ロドトルラは早い段階で対処することが重要で、放置すると多くの厄介ごとを生み出します。

ピンクカビ「ロドトルラ」が厄介な理由

その1つは、「増殖スピードが速い」ことです。

ブラシなどで少し擦れば、ピンク色の汚れを落とすことはできますが、数日すると(早いときには2日ほどで)、また同じ場所に出てきてしまいます。

ロドトルラは、水さえあれば少ない栄養源で繁殖ができ、一週間で数十億個になる場合もあります。

このように糸状菌に比べて圧倒的に再発が早いという特徴があり、除去する際に軽く擦る程度では菌を残してしまうため、アルコール(除菌を目的としたエタノール濃度70%以上のもの)やカビ取り剤(次亜塩素酸塩を含むもの)でしっかりと除去しなければなりません。

2つ目の厄介ごとは「色の付着」です。

カロテノイドという色素を持っており、増殖を放置してしまうと色素が建材に付着し、色づけしてしまう恐れがあります。
※カロテノイド:動植物に広く存在する黄色または赤色の色素成分

よく見受けられるのが、ドアパッキンや目地のコーキングなどへの色移りで、除去が困難になることがあります。

予防法について

浴室のロドトルラなどの菌類は、乾燥した状態では増殖しない傾向のものが多いため、使用後の乾燥を徹底することでも抑制の効果があります。

しかし、乾燥によって菌が死んだわけではなく、休眠状態にあるだけなので、水分を得た途端に速いスピードで増殖するため、やはりきちんと除去するしかありません。
※除菌:アルコール(除菌を目的としたエタノール濃度70%以上のもの)やカビ取り剤(次亜塩素酸塩を含むもの)

また、栄養源となる「石鹸カス」や「皮脂」などの汚れを除去することで繁殖を予防することができます。
※汚れの除去:泡立ちの良い中性洗剤や風呂用洗剤を使用します。

「汚れ(栄養源)の除去」「除菌」「乾燥」
この3つの工程を繰り返し行なっていくことが最も確実で効果的な予防法です。

◆ カビなどの発生を知らせるサイン

こうして見ると、他の糸状真菌や細菌類の増殖条件とよく似ていることがわかります。

言い換えれば、増殖スピードが速いロドトルラは、他の菌類よりも先んじて繁殖し、色づき始めるということです。

色づいた場所は、栄養源が豊富で、湿度もちょうどよく、「カビ等の繁殖に適した環境である」という目印になります。

ロドトルラが発生したら、次にカビや糸状菌が増殖するサインとも言えるでしょう。

ロドトルラの発生を放置したら、なかには病原性の微生物が含まれていることも考えられます。

水回りは、日々の生活で使用頻度の高い場所であり、常に衛生的な空間として維持したい場所です。

★水気を残さない
★栄養源になる石鹸カスや皮脂といった汚れを残さない
★見つけたら早期に除菌する(小まめに除菌を行う)
ことで発生・繁殖を抑制し、衛生的な環境を維持することができるでしょう。

触媒を用いた表面コーティングなども、栄養源になる有機物や菌の定着を抑制するためには役立ちます。

簡単に落とせるからと言って甘く見ず、小まめなお手入れでピンクカビの発生を防ぎましょう。