〈カビコラム27〉食品工場のカビトラブル① − HACCP義務化で増えるリスク

HACCP導入で注目される「カビ問題」

2018年の食品衛生法の改正から食の衛生管理がより高度なものを目指すようになりました。

その2年後の2020年6月には法が施行され、食品の提供においては工場での原材料の仕入れから出荷まで、HACCP(ハサップ)の導入によって、リスクを最小限にすることが義務化されました。

また、工場に限らずその先の小売り販売まで一貫した管理が求められるようになり、消費者の安全安心がさらに強固なものとなりました。

ところが、法律の施行を経て、食品取り扱い施設におけるカビ問題が注目されるようになってきました。
それはなぜなのでしょうか。

※補足:HACCAPとは?
食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。(出典:厚生労働省-HACCPとは?

 

◆ 逆に見落とされるカビ対策

HACCPの導入が義務化され、ライン内のハザード(危険)や対策ポイントの洗い出し、その部分の管理においては強化されてきたと思います。

ですが、ハザードポイント以外の部分が後手に回り、カビが放置されてしまっている状況が目につくようになりました。

HACCPでは、おもに人体に影響を及ぼすリスクを優先的に洗い出します。

そのため食中毒を引き起こす原材料の微生物汚染や、加工工程・加熱工程などの温度管理や異物混入リスクなど、日常的な管理にポイントが絞られがちになります。

HACCPでいうところのPRP(一般管理プログラム)に日常的な清掃や防虫対策は含まれますが、広範囲にわたる適用には至らず、カビのような生物は、抜け穴のように未対応の箇所で時間をかけて生育してしまうのです。

◆ 日常的には対応できない隠れた危険

現在、カビに関する相談が多く寄せられているのが、壁裏や天井裏、ダクト内、そして外壁などです。

工場内では、製造ラインの移設や増改築が頻繁に行われます。
また、HACCP導入による衛生管理の強化に伴い、製造ラインなどの改築も多く行われてきました。

その際に、増築された部屋などがあると、内壁と外壁の間が放置されることがあります。

部屋の内部を守るために気密性を上げ、改築するたびにこのような場所に空気のよどみが発生し、湿度が溜まりカビが増殖することになります。

この事例は現在多発しており、部屋内に確認されたときには壁裏や天井裏にはびっしりとカビが繁殖していることがあります。
劣悪な場合は、臭気も強く感じられる場合もあります。

また、空いたスペースには空調設備などが設けられるケースが多く、ダクトなども侵されてしまうと、汚染された空気を循環させてしまうリスクがあるため、すぐに是正する必要があります。

その他にも、製造に用いる器具や機材などの洗浄室、設備室、ポンプ室など、生産とは関係が薄く、一見リスクが低く感じられる場所は見落とされがちです。
このような場所に発生したカビも同様に、建物内にどのように飛散するか予想がつきません。

(施工事例URL:埼玉県 食品工場)

特に、人の出入りのある場所は、胞子が持ち運ばれるリスクがあるためさらに注意が必要です。

衛生管理が厳格化するなか、複雑に設計されている生産工場などでは、いまだカビに対するメンテナンス方法が確立できず、困っている企業も多いのではないでしょうか。

地球温暖化の影響により9月に入っても温度と湿度が保たれるため、今一度リスクを想定する必要性があると思われます。