〈カビコラム28〉食品工場のカビトラブル② − 防カビ塗料を施しても安心できない

室内側に発生するカビのトラブル

前回は、HCCAP(ハサップ)導入により、逆に見落とされてしまうことが増えた箇所を発生源とするカビの事例を紹介しました。
カビコラムURL:〈カビコラム27〉食品工場のカビトラブル① − HACCP義務化で増えるリスク

HACCPの導入が義務化され、ライン内の対象箇所その部分の管理においては強化されてきたと思います。

しかし、清掃がいき届かない高所や天井面などにカビの生息を許してしまっている事例が今でも多く見受けられます。

今回からは、室内側に発生するカビのトラブルを「天井に発生したカビ」を例に紹介していきます。

◆ 高所・天井面のカビ

食品工場だけに限らず、高所・天井面のカビ洗浄のご依頼をいただくことが多くあります。

カビの特性として、コロニーを作り色がついてしまったときには、すでに至るところで目視できないカビも大量に存在していることが考えられます。

室内側に発生するカビは、生産物に混入するリスクが高いため早急に対応しなければなりません。

さらに、カビはウイルスや細菌と比べると粒径が大きいものが多く、落下する特性があるため、気づかぬ間に製品に混入してしまい、甚大な被害をもたらすこともあります。

防カビ塗装面に発生したカビ

こちらは、とある食品製造施設の天井に発生してしまったカビです。

この部屋を使用し始めてから5年ほどでカビが見受けられるようになったとのことです。

湿度、温度を一定に保つことが必要な部屋であり、カビ除去を何度行ってもたびたびカビが発生することから、防カビ塗料を塗布した経緯があるそうです。
※天井材:ケイカルボード

にもかかわらず、カビが発生しているのです。

◆ 防カビ施工をしてもカビが発生する!?

近年多発している事例ですが、防カビ塗料も適正な環境下で正しく施工を行われなければ、カビは再発し、写真のように内部から増殖してしまうのです。

この施設の場合、現象の原因は、カビを完全に除去せずに防カビ塗料を塗布したことにありました。

石膏ボードやケイカルボードの場合、裏面(天井裏)からも湿気や空気を取り入れることが考えられます。

室内側表面に塗料を施しても、カビは死滅することはなく内部で生育します。

それにより、塗料の接着成分を犯し、その後侵食し室内側表面に至ってしまうのです。

この状態になると、室内側から塗料内部にカビ取り剤を浸透させることは不可能であり、改善が非常に困難になります。

また、内部からの発生が確認できない箇所でもカビは広い範囲で繁殖しているケースがあります。

常に蒸気が発生する区画では、防カビ塗装面が湿気を帯びた状態となり、そこにほこりやちりなどが付着する環境下でもあります。

たとえ防カビ塗装表面が効果を発揮していても、ほこりやちりが積もることを放置してしまえば、その上にカビが生育してしまいます。

油煙などが常に発生する環境下でも同様のリスクが考えられます。

最近では自身で施工することができる防カビ塗料なども販売されていますが、まずは仕様が適しているかの検討を正しく行うことが必要です。

不慣れであれば自身で決断せずに、専門家の知識を借りるべきだと考えます。

また、施工を決定した際もカビの生育や増殖に適した環境であれば、適正な除菌処理を施したうえで施行することを推奨します。

自然界のなかで大量に生息している菌であるカビは、まず持ち込まないことに努めるべきですが、場内で生息を確認してしまった場合は、適正な対応を迅速に施さなければ、さらにカビが広がるリスクや、ご紹介した塗装の爆裂のような想定外のリスクを抱えることになりかねません。