〈カビコラム29〉食品工場のカビトラブル③ − 注視したい外壁の汚れ
建物外部のカビのリスク
前回まで、食品工場の加工場や室内のトラブルを中心に紹介をしてきました。
HACCP(ハサップ)が義務化され、生産工場では人体的被害をおよぼす事故を減少させるために、HA(ハザードポイント危害要因)の洗い出しによりCCP(重点管理ポイント)が設定されます。
この時主軸になるのが、原材料の衛生管理と製造加工工程です。
しかし、最近になって注目され始めたのが、外壁や貯蔵タンクなどの施設外の衛生管理です。
直接製造品に関わるリスクが低く、大型の施設ではメンテナンス内容により高額な修繕費が必要な場合もあるため、どうしてもケアが後回しになる傾向があります。
今回は意外と注目されていない建物外部のトラブルを紹介していきます。
◆ 外壁が汚れている場合の様々なリスク
意外と認知されていませんが、外壁の汚れの正体は、その大半がカビです。
カビの性質上、生育し胞子を形成した後は、風などで飛散していくことが考えられます。
飛散した胞子を外気の取り入れ口や人の出入りによって、施設内に運び入れてしまうリスクがあります。
外壁が汚れている場合、工場内に外気を取り入れる際には細心の注意が払われているため、室内に流入するケースは少ない、もしくはそのように努力されているのだと思います。
現状、対策が施されていない場合は、早期に対策する必要があると言えるでしょう。
次に考えられるリスクは、建物の劣化です。
外壁の汚れと一緒にカビが大量発生している場合は、外壁が既に劣化している可能性があります。
外壁には通常、撥水性や防汚効果を考えた素材が選定されています。
これが雨風(特に酸性雨)の影響を受け、さらに表面が劣化してくるとほこりやちりが付着し、カビの栄養源になってしまいます。
※酸性雨の影響で外壁の性質が、カビが最も好む「弱酸性」に変化してしまうことも、カビの繁殖を助長する一つの原因になります。
また、カビの付着を放置すると、さらにほこりやちりを纏い、生育スピードが早まります。
可能であれば、早期に、または定期的にメンテナンスを施し、建材そのものを清潔に維持していくことが推奨されます。
最後に、近隣への問題です。
カビの飛散については、近年メディアなどでも紹介されているため、外壁にカビが見受けられると「自分の家まで飛んできた」などという近隣トラブルに発展する恐れがあります。
原因の究明は困難ではありますが、周辺への配慮も視野に入れなければならない現実があります。
外壁は、劣悪になる前にメンテナンスを施すことで、その費用も抑えることができます。
衛生意識が高まってきているこれからは、効率的で適正なコストであるメンテナンスシステムの需要が高まってくるのではないでしょうか。