〈カビコラム30〉食品工場のカビトラブル④ − カビは清掃不良のサイン
清掃が行き届いていない箇所
今回は、食品工場内の清掃で見落とされがちな箇所と、そこで多く見受けられるカビを紹介していきます。
日々、清掃を行ってはいるものの、やはり時間と労力に限界があり、手が回り切らないというお話をよく耳にします。
被害に直接繋がりにくいことから、清掃が後回しになってしまう箇所があるようです。
◆見落とされがちなライン下部
工場内では、加工や充填の際に製品内部に異物や菌などが混入されないよう、ライン自体やその上部などが注目されています。
しかし、(特に暑い季節に)意外と危険箇所として取り上げられるのが、ラインの下部です。
フィラーやコンベアの裏側、足まわりなど、機械によっては配線なども下部に設置されているものもありますが、こうした直接的に害を及ぼさないような場所にカビが育ってしまうケースが多く見受けられます。
かがみこまなければ発見できないことや、配管・ケーブルなどが入り組んでいて清掃がしにくいこと、清掃箇所として含まれていても隅々までできているかという清掃の精度の問題もあります。
長い間手が入れられてなかったり、清掃が不十分であったりすると、食品残渣によって真菌や細菌の温床となります。
カビが色づくほど放置されている場合は、清掃不良のサインと捉え、清掃の手法や頻度を改善する必要があると考えられます。
◆グレーチングにも要注意
ほかにも、場内の下部として注意が必要なのが、グレーチングや縞鋼板などの金属部材です。
日常的に床の洗浄は行われていると思いますが、清掃の甘さが目立つ箇所です。
グレーチングの形状から裏面や手の入りにくい局所などは、汚れや水も滞りやすく、すすぎ不足による洗剤の残留が懸念されます。
食品残渣のみならず、洗剤成分の残りもカビ発生の原因になります。
基本的な清掃手法として、
- 中性洗剤やアルカリ性洗剤を使用し、汚れを洗浄する
- 高圧洗浄機や流水で汚れ・洗剤をすすぐ
- 除菌剤やアルコール、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸水などで消毒
という手順で、清掃を行っていると思います。
しかし、清掃不良で汚れや洗剤が残っていると、除菌剤の効果が発揮されません。
衛生状況を向上するのであれば、まず精度の高い清掃を行う必要があります。
下部に存在する食品残渣や、それを栄養源にして発生したカビは、直接的な危険性は低く思われがちですが、ハエ目の虫やチャタテ虫が発生する原因になる恐れがあります。
(画像引用:東京都保健医療局-チャタテムシとシミ)
チャタテ虫などはカビを捕食しながら徘徊するため、カビの胞子を撒き散らしてしまい、他の箇所まで汚染を広げることになりかねません。
※コラムURL:〈カビコラム14〉カビを食べる虫、カビを広げる虫
カビは目立たないところで知らず知らずのうちに発育しており、気付いたときには手の施しようがなくなっているケースもあります。
小さくても、カビを見つけたら清掃不良のサインと捉え、細部を点検することを推奨します。