〈カビコラム31〉カビが引き起こす心身的影響① – 臭気トラブル
カビが放つ「臭い」によるトラブル
これまで、カビを放置することでの建物被害や異物の混入トラブルなどを紹介してきましたが、今回からは人に対する直接的な被害を紹介していきます。
生活空間でカビを放置していると、人体に対してさまざまな影響を及ぼします。
カビの人体への影響として知られているものは「真菌症」と総じて言われています。
皮膚や粘膜に症状が現れる表在性真菌症と、からだの深部まで犯される深在性真菌症です。
(※補足:真菌症の例・・・ページ下部)
最近では、真菌症に加え、「カビの臭い」がトラブルに発展するケースも多くあります。
今回は、そんな「カビ臭」についてご紹介していきます。
◆個人差があるカビの臭気
人体にさまざまな影響を与えるカビですが、人の抵抗性には個人差があるため、どれほどのカビの数があれば危険という指標も断定しにくく、そうなると管理する側も対処方法・レベルを策定するのも難しいのが現状です。
カビが発生したら清掃すればいいと思われますが、「どれほど発生したら清掃するべきか」という基準にも個人差があり、生活の中では常に感覚的な判断に委ねられています。
目に見えるカビが気になるかどうか、また、カビ臭さもどれほど気になるか、ここにも大きく差が出てきます。
不快感に個人差があるため、自分は良くても、他の家族や近隣住民が敏感にこの臭いを感じ、臭気トラブルにつながるケースも見受けられます。
◆カビが放つ臭気の種類
「カビ臭」は、誰もが一度は感じ取ったことがあるかと思います。
このカビの臭気は大きく分けて2つあり、1つ目が「メチルイソボルネオール」および「ジオスミン」という物質が原因であることが示唆されています。
菌の生育に伴って発生し、俗にいう「土臭さ」や「泥臭さ」を感じさせます。
自然の中では河川など、生活空間ではキッチンや浴室といった水回りに発生しますが、恐らく、感じるはずのない場所でこの異臭を検知すると不快に思うのではないでしょうか。
2つ目は「ハロゲン化アニソール」と言われ、主にカビ取り剤に多く含まれる塩素が原因となる、「トリクロロアニソール(TCA)」という物質になります。
コルクから発生するワインの異臭、紙類や木材が濡れたまま放置されたりすると発生する臭いが特徴で、古くから異臭物質として検出されています。
塩素と有機物が反応することで発生してしまうため、塩素系漂白剤などを使用して除菌を行った際に、真菌(カビ)を完全に分解することなく、また有機物の付着を完全に取り除くことなく、中途半端に処理を行ってしまうと臭いの原因を作ることとなってしまいます。
◆「カビ臭」はカビの増殖のサイン
臭いは複合し、感知しづらいケースもありますが、カビ臭を感じた際はどこかでカビが発生し、増殖しているサインです。
まずは、目視で確認できる場所にカビがないか確認し、対処することを推奨します。
見つけられない場合は、さらなる被害を広げないために専門家に相談するほうがいいでしょう。
臭気の感じ方は人それぞれですが、気になり出すとストレスを感じることがあり体調不良につながることもあります。
また、近年では周りの人に臭いと感じられているのではないか?不快感を与えていないだろうか?という不安がストレスになることもあると聞きます。
世間の衛生意識が高まる中では、臭いの問題までを理解し、そういった不安を解消することのできるメンテナンスが必要になってきているのではないでしょうか。
※補足:真菌症の例
[表在性真菌症]
水虫・タムシ / カンジダ症 / アレルギー症状 / アトピー症状
[深在性真菌症]
①アスペルギルス症
・喘息に似た症状(咳や痰、喘鳴)
・重症化すると、血痰、喀血、発熱、肺炎等を引き起こす。
・侵襲性のアスペルギルス症が生じると治療をしなければ死に至る。
②クリプトコッカス症
・鳩の糞に存在するカビ菌による感染症
・重症化することは稀 放置すると髄膜炎を引き起こす危険性がある。
・重症化すると進行が早く、発熱、頭痛 嘔吐、意識障害や痙攣を起こす。
・1日から2日で死に至るケースも・・・
③夏型過敏性肺炎
・急性症状:カビの胞子を吸入後6~8時間で発症
→ 発熱 / 咳 / 息切れ / 倦怠感 / 吐き気 / 悪寒 / 胸部圧迫感
・慢性症状:毎年症状を発症することで慢性化
→ 呼吸不全 / 肺機能の低下 / 心不全 / 強い疲労感