〈カビコラム32〉カビが引き起こす心身的影響② – 実は怖い真菌症
真菌症とは?
カビが引き起こす病気を総じて「真菌症」と呼びます。
近年では、テレビやネットメディアなどで見聞きするようになりましたが、細菌やウイルスによる感染症と比べると認知度は低いものではないでしょうか。
しかし、実はあらゆる感染症のなかでも発症率は高く、その数は全人口の10%を超えるともいわれています。
白癬菌(水虫・タムシ)のような皮膚表面に現れる症状の「表在性真菌症」と言われるものから、人体の深部に症状が現れ場合によっては重症化し、死にいたるケースも存在する「深在性真菌症」と大きく2つに区別することができます。
◆真菌症の厄介な性質
人は空気中に無数に飛んでいる真菌を常時吸い込み、体内に取り込んでいるわけですが、健常な人体には抵抗力が備わっているため、発症を免れたり、重症化せずに済んでいます。
しかし、闘病中のような過労時に細胞免疫力が低下すると真菌は猛威を振るうため「※日和見感染症」と称されています。
※日和見感染症:健康な宿主に対しては病原性を発揮しない病原体が、宿主の抵抗力が弱っているときに病原性を発揮しておこる感染症のこと
また、一度重症化してしまうと完治するのが容易ではない真菌症も存在します。
真菌症は人から人へ感染(飛沫感染)しないことや、細菌のように爆発的に繁殖する特性を持ち合わせていません。
そのため、経日的にゆっくりと症状が悪化していくことがあり、「気づいたときには症状が進行していることもある」という厄介な特徴を持っています。
ちなみに、空中浮遊菌を吸い込むことで発症する深在性真菌症のなかにも、咳や痰、発熱などから始まるものもあり、「ただの風邪」と勘違いしてしまうこともあるかもしれません。
表在性真菌症では肌荒れなどが見受けられ、市販の薬ではなかなか治り切らず、長引いてしまうケースも見受けられるようです。
当然、症状が改善されない場合は、医師の診断を受け正しく治療することが必要になります。
もう1つの厄介な特徴は、真菌症の感染および重症化は人の抵抗力に左右されるため、どれほどの浮遊菌、またどれほどの付着菌によって危険が生じるのかを断言できないことです。
ですから、感染経路を断定することも困難であることがわかります。
真菌症を患ってしまった場合、仕事場や住まいなどの居住空間に問題があると思われがちですが、自然環境で感染した可能性もあります。
◆潜伏期間が長く、無症状が続く例も!
「コクシジオイデス症」という真菌症は、アメリカ大陸(米国南西部やメキシコ、中南米の一部)での症例が大部分を占めますが、日本でも症例は確認されています。
※コクシジオイデス症とは−NIID国立感染症研究所
この真菌症は潜伏期間が長く、7〜21日間とも言われ、感染してから発症するまで気づきにくいことがあります。
そのため、渡航歴を確認される場合が多いそうです。
人から人への感染はしないそうですが、土中に潜むため建築や強風などで舞い上がり感染します。
(渓谷熱/valley fever、砂漠リューマチ/desert rheumatism、砂漠熱/desert feverとも呼ばれます)
感染力が非常に高く、病原性は過去にヨーロッパで大流行したペスト(黒死病)と並ぶ4類感染症に指定された唯一の真菌症です。
このように、気がつかないうちに進行してしまい重篤化する真菌症も存在しています。
まずはその存在を知ることから始め、高齢者や闘病中などの抵抗力の低い方の周りでは、常にリスクがあることを頭に置いておくといいでしょう。
そこから、居住空間の衛生管理を考え、対処する必要も出てくるかもしれません。
参考:真菌症(カビ毒)による事故例
■事件/事故例①七面鳥X病事件
1960年イギリスのイングランド地方で春から夏にかけて10万羽以上の七面鳥の雛が次々と大量死。
原因は餌のピーナッツに生えていたカビの毒であることがわかった。
■事件/事故例②アウトブレイク
穀物に発生したカビが原因で、2004年にケニアで317人の黄疸患者が報告され、そのうち125人が死亡しました。※患者致死率 : 39%
※参考:東京都保険医療局−アフラトキシン