〈カビコラム36〉介護施設内で放置してはいけないカビ②
目に見えるが対応が難しいカビ
前回は、普段は目視で確認できない床や壁裏、天井裏に潜む真菌についてご紹介しました。
今回は目に見えてはいるものの、対応が困難で放置されがちな真菌を紹介していきます。
◆壁紙のカビ
近年問い合わせが増えているのが、この壁紙に増殖するカビです。
壁紙にはあらゆるカビが生息している可能性があります。
代表格は黒い色をつける、俗に「黒かび」と言われるクラドスポリウムです。
事業者様からご依頼いただく案件の半分以上がこの黒かびであり、やはり一番多く見受けられます。
よく目にするカビですが、対応が遅れると実は厄介な事例も存在します。
他にも青、グレーと様々な色のカビが見られます。
「ススカビ」と言われる種アルテルナリア属は、壁や天井の隅の方や、家具の裏側など湿度と熱の溜まる場所に増殖し、一見埃やゴミと間違われることもあります。
このカビは空中に飛散しやすく人が吸い込むことでアレルギー性の咳や、重篤化すると喘息を発症することもあると言われています。
◆壁紙のカビの対策方法
壁紙のカビは発生の仕方で対策方法が異なります。
○壁紙表面に現れるカビ
現在壁紙はビニルクロスと言われるポリ塩化ビニル製の製品が広く使用されています。
防汚性能に優れ、またデザインなどがプリントしやすいことから広く使われていることと考えられます。
この素材は撥水性を持ち合わせているため、湿度が高く温度差が発生する季節には、結露を起こしカビの発生を助長することがあります。
クローゼットや部屋の隅にあたる部分、また窓際などにカビが発生しているのがこの現象と考えられます。
湿度が高くなる梅雨時期や、過剰な加湿によって結露が発生しやすくなる冬場には、適切な湿度を保つ工夫が必要です。
梅雨時期の6月、7月は外気の平均湿度が75%〜80%に上ります。
この環境下では除湿が及ばないため、湿度だまりを起こさないように送風などで空気の流動を起こすだけでも成果が得られます。
さらに重要になるのは日々の清掃です。
ススカビは埃やチリを栄養分として生育するため、放置せずに早期に対処していくことです。
日常的な清掃と空気循環で健康被害を招かない様にしていただきたいです。
○壁紙裏のカビの対処方法
壁紙表面ではなく、壁紙の下地にまでカビを確認できる事例が存在します。
このカビの原因は多数存在するため、断定するのが困難な場合があります。
まずは湿気の高い場所で結露を長期間放置することで、壁紙ジョイントからボードの内側まで湿気が及んでいることがあります。
ボードを止めるビス穴やボードの継ぎ目など隙間から表まで進出してきている場合には、内部はかなり大量に発生している恐れもあります。
経年により老朽化した建材でこのような場合が見受けられます。
他にも躯体内部の結露でボードの裏側がカビだらけだった事例も存在します。
これはボード内部に水道管や空調設備などが設置されていて温度差が生まれている場合に起こります。
ボード内部に大量発生してしまった場合、ボードを解体し、内部を露出させた上で対処をしなければならないこともあり、時間も費用も大きくなってしまう恐れがあります。
カビを発見したら放置せずに早急に対応策を練ることが賢明です。