〈カビコラム41〉カビ対策をする上での注意点②-カビの再発トラブルとプロが知るべき注意点

じめじめとした梅雨の季節は、私たち人間にとって不快なだけでなく、カビにとってはまさに絶好の繁殖期です。
ビルメンテナンスに携わる方々にとっては、お客様からのカビに関するご相談が増える時期であり、一般の方々も、自宅のカビ対策に頭を悩ませることが多いのではないでしょうか。

今回は、この梅雨時期に特に注意が必要なカビ取り作業における「人身事故」以外のトラブル、特に「建材の変色」「カビの再発」に焦点を当て、その原因と対策について詳しく掘り下げていきます。

梅雨明けを気持ちよく迎えるためにも、今一度カビ対策の注意点を確認していきましょう。

カビ取り剤による変色トラブル

カビ取り作業でまず注意したいのが、カビ取り剤による建材や周囲への影響です。

市販されているカビ取り剤の多くは、カビの色素を分解する漂白性能を持っています。
これはカビをきれいに除去するために非常に有効な機能ですが、使用時には注意が必要です。

漂白剤の特性上、対象物だけでなく、その周辺にあるものまで漂白してしまう可能性があります。

  • 繊維製品:作業着、カーテン、カーペット、バスマットなどが、カビ取り剤の飛沫で色抜けしてしまうケースが頻繁に報告されています。特に浴室での作業では、足元に飛び散った洗剤がバスマットに付着し、色ムラの原因になることも。
  • 木材:木材に使用した場合、色褪せや変色の原因になることがあります。これは、木材自体が持つ色素が漂白されてしまうためです。


作業前には必ず、対象となる建材の種類や材質を確認し、可能であれば目立たない場所で試してから使用することが重要です。
また、周囲の養生を徹底し、作業員の服装にも注意を払うようにしましょう。

「清掃したのにまた生えてきた!」カビの再発トラブル

カビの再発は、ビルメンテナンス業者にとってお客様からのクレームにつながりやすい、特に厄介なトラブルです。
一般の方々も、せっかくきれいにしたのにすぐにカビが生えてくると、「きちんと清掃できていないのでは?」と不満を抱いてしまいます。


なぜ、清掃したはずなのにカビはすぐに再発してしまうのでしょうか?
その原因は、大きく分けて2つ考えられます。

1. カビの「見た目」に騙されない!不完全な分解が再発を招く

カビは非常にしぶとい生物です。若いカビは透明に近い色をしているため肉眼では見えにくく、成長して集団を形成する際に、私たちが目にする特徴的な色(黒や緑など)を持つ胞子を形成します。
さらに、カビは建材の表面だけでなく、内部にまで根を張って繁殖する特性を持っています。

漂白性能を持つカビ取り剤は、カビの胞子が持つ色素を分解するため、見た目にはカビが消えたように見えます。
しかし、これはあくまで表面的な「漂白」に過ぎず、カビの本体が完全に死滅しているわけではない場合があるのです。

また、カビは油汚れ、ホコリ、チリ、浴室であれば皮脂や石鹸カスなど、様々な汚れが付着した状態で生息しています。
これらの付着物が大量にある場合、カビ取り剤や除菌剤(アルコール、塩化ベンザルコニウム、次亜塩素酸ナトリウムなど)の効果が著しく低下することがあります。
カビ取り剤がカビ本体に届きにくくなったり、有効成分が消耗されてしまったりするためです。

表面の色は消えても、付着物やその中に潜むカビが残っていると、わずかな時間で再び目に見えるほどに成長してしまいます。
これが、早期の再発の主な原因です。

2. 環境要因を無視しない!カビが好む場所は再発リスク大

カビは、特定の条件が揃うと爆発的に増殖します。
以下の環境条件は、カビの温床となりやすい傾向にあります。

  • 高い温度と湿度:20~30℃、湿度70%以上はカビにとって最適な環境です。特に梅雨時期は、この条件が揃いやすくなります。
  • 常に水分を保有する建材:結露しやすい場所、水漏れがある場所、通気性の悪い場所など。
  • 豊富な栄養源:ホコリ、皮脂、石鹸カス、食品カスなど、カビが栄養として利用できる有機物。

このような、カビの増殖条件が常に整っている環境では、どれほど丁寧にカビ取り作業を行ったとしても、再発のリスクは避けられません。
(その他、「弱酸性の環境」「酸素がある環境」が生育条件に含まれます)

近年、特に相談が増えているのが、防カビ処理に関するトラブルです。
防カビ剤を含む塗料やコーティング剤が普及していますが、カビの発生しやすい劣悪な環境下で使用した場合、期待通りの効果が得られずにトラブルになるケースが見られます。

お客様には、単なる清掃(カビ除去)だけでなく、日々の生活習慣や建物の構造がカビの発生に影響することを丁寧に説明し、理解を促すことが、再発トラブルを防ぎ、信頼を得るための最善策となるでしょう。

カビ発生の根本問題の解決に向けて

カビ対策は、単にカビを「消す」だけでは不十分です。
ビルメンテナンス業者の皆様には、カビの生態、カビ取り剤の特性、そしてカビが発生しやすい環境条件について深い知識を持ち、お客様に適切な情報と解決策を提供することが求められます。

一般の消費者の皆様も、ご自身でカビ取りを行う際には、カビ取り剤の注意事項をよく読み、換気を十分に行い、必要に応じて専門業者への依頼も検討してください。

梅雨の時期を快適に過ごすためにも、カビの再発を防ぎ、清潔で健康的な空間を維持するためには、私たち一人ひとりがカビについて正しく理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。