〈カビコラム42〉梅雨明けに要注意!「夏型過敏性肺炎」とエアコンの意外な関係
私たちの暮らしに欠かせないエアコン。
しかし、梅雨から夏にかけての時期は、そのエアコンが思わぬ病気の原因になることがあるのをご存知でしょうか?
今回は、カビの一種が引き起こす「夏型過敏性肺炎」について、その症状や原因、そして予防策まで、健康を守るために知っておきたい情報をお届けします。
夏風邪と間違えやすい?「夏型過敏性肺炎」とは
夏型過敏性肺炎は、アレルギー性の肺疾患の一つで、特に酵母型真菌の一種である「トリコスポロン」が原因となることが多いと言われています。
初期症状は「風邪」にそっくり!
この病気のやっかいな点は、初期症状が軽い風邪と非常によく似ていることです。
- 咳
- 痰
- 発熱
- 倦怠感
などの症状が現れるため、「夏風邪かな?」と思って放置してしまうケースも少なくありません。
しかし、そのままにしておくと、徐々に症状が悪化し、息切れや呼吸困難を伴う重い肺炎へと進行してしまう危険性があります。
梅雨明けに注意!繰り返す症状がサイン
その名の通り、夏型過敏性肺炎は梅雨が明けた頃から発症が多くなる傾向があります。
- 抗生物質や風邪薬で一時的に症状が改善したものの、次の年の夏にまた同じ症状がぶり返す
- 原因不明の咳や発熱が夏になると続く
- 自宅など特定の場所を離れると、症状が緩和される
といった経験がある場合は、夏型過敏性肺炎の可能性があります。
中には、症状が軽いため数年間気づかずに過ごし、重症化してからようやく診断されるケースもあるようです。
真菌(カビ)の温床に?空調設備と真菌の密接な関係
夏型過敏性肺炎の原因となるトリコスポロンは、水回りなど住居内の様々な場所に存在しますが、特に注意が必要なのがエアコンをはじめとする空調設備です。
エアコン内部はカビの温床
夏場のエアコンは、冷たい空気を作り出す際に内部で結露が発生し、常に湿った状態になります。
この「湿気」と「適度な温度」という環境は、まさに多くの真菌(カビ)にとって繁殖に最適な条件です。
エアコン内部で真菌が増殖すると、運転時に吹き出し口から胞子が部屋中にばらまかれてしまいます。
私たちは日常生活の中で、その空気を吸い込むことで、知らず知らずのうちに真菌を体内に取り込んでしまうリスクがあるのです。
空調設備から排出される真菌によって居住空間の空気環境が悪化している場合、その場所を離れることで症状が緩和されることもあるとされています。
[加湿器にも潜む危険性]
最近では、冬場に使用する加湿器からもトリコスポロンが確認される事例があります。
つまり、季節を問わず、湿気を伴う空調設備全般が真菌の発生源となる可能性があるということです。
日頃から空調設備の清掃を心がけ、清潔に保つことが非常に重要です。
予防と対策:快適な空気環境を保つために
真菌が引き起こす身体への影響の中でも、夏型過敏性肺炎は比較的症例が多く、重篤な症状を引き起こす可能性があるため、特に注意が必要です。
日頃の清掃とメンテナンスが鍵!
最も効果的な予防策は、居住空間の衛生状況を良好に保ち、真菌の発生・増殖を抑えることです。
特に、以下の点に注意しましょう。
- エアコンフィルターの定期的な清掃: 最低でも月に1回はフィルターを清掃し、可能であれば専門業者による内部洗浄も検討しましょう。
- エアコン使用後の送風運転: エアコン停止前に送風運転を数十分行うことで、内部を乾燥させ、カビの発生を抑えることができます。
- こまめな換気: 部屋の空気を入れ替えることで、湿気を排出し、カビの胞子を外に出すことができます。
- 水回りの清掃: 浴室やシンク下など、水回りも定期的に清掃し、カビの発生を防ぎましょう。
- 空気清浄機の清掃と水の交換: 毎日水を交換し、タンクやフィルターはこまめに清掃しましょう。
早期発見・早期治療の重要性
もし、夏風邪のような症状が長引いたり、毎年のように夏に同じ症状を繰り返したりする場合は、早めに医療機関(呼吸器系内科)を受診しましょう。
慢性化すると「呼吸不全 / 肺機能の低下 / 心不全 / 強い疲労感」などの症状を引き起こす危険性があるため、安易に「夏風邪だ」と自己判断するのは危険です。
特に、過去に肺炎や結核、肺気腫などを患ったことがある方や、長年喫煙されている方は、重症化するリスクが高いと言われています。
真菌症の治療は、原因となっている真菌の種類を特定することが重要ですが、真菌の特定は専門的な知識と技術を要し、困難を極めることも少なくありません。
そのため、まずは疑わしい症状があれば専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
梅雨が開ける前に・・・
梅雨が明け、本格的な夏が来る前に、ぜひご自宅のエアコンや空気清浄機のメンテナンスを見直してみてください。
清潔な空気環境を保つことは、夏型過敏性肺炎だけでなく、様々なアレルギーや呼吸器疾患の予防にも繋がります。