〈カビコラム46〉見過ごせない「秋のカビ」のリスク
秋が深まり、段々と過ごしやすい季節となってきましたね。
この時期に、カビの専門家としてお伝えしたいのは、「カビは真夏だけのものではない」ということです。
カビは、単なる汚れではなく、大切なご家族の健康や、長く住まう家そのものにもダメージを与える脅威です。
また、老健施設や保育施設などにおいては、衛生問題に留まらず、建材の劣化、設備の故障、従業員や利用者の健康リスク、そして最終的な資産価値や信用度の低下に直結する深刻な管理課題です。
そういった意味で、この秋の到来は、施設や建物の管理者、ビルメンテナンス担当者にとっても、カビ対策のフェーズが切り替わる重要な時期を意味します。
このコラムでは、専門的な知見に基づき、秋にカビが増えるメカニズムを解説し、安全で丁寧な暮らしを守るための確実な予防と対策をご紹介いたします。
◆ 専門的な研究が示す「秋カビ」の活発化
カビの生態に関する研究では、一般的な認識に反し、カビは極端な高温多湿下(真夏など)で活動が鈍る「夏バテ」の状態にあることが示唆されています。
そのため、カビは気温が緩やかに低下し、活動しやすい温度域に戻る夏の終わりから秋にかけて増殖を再開します。
また、室内環境の調査データからも、秋になっても水回り、給排気口付近、外壁に接する構造部など、施設の特定箇所では依然として高いカビ汚染リスクが続くことが報告されており、油断は許されません。
1. プロの管理視点で捉える「秋カビ」増殖の4つの原因
施設内でカビが増殖する要因は、建物の構造、空調システムの運用、そしてメンテナンスサイクルに深く関わっています。
① 建物を冷やしてしまう「熱橋(ヒートブリッジ)」で起こる結露
秋の朝晩の冷え込みで、梁や柱、金属のサッシなど、熱が伝わりやすい構造上の弱点(熱橋)が急激に冷やされます。
ここに湿った空気が触れると、大量に水滴(結露)が発生します。
この水滴は、壁の裏側や構造内部など見えない場所でカビの生育を助長します。
→ ご家庭の窓枠や北側の壁、家具の裏側で結露が発生するのも、この原理と同じです。
② 空調機内の「ドレンパン・コイル」の残水と湿気
夏の冷房を止めて暖房に切り替える準備をする際、空調システムの中に水が残ったままになりがちです。
特に水をためる皿(ドレンパン)や熱交換器(コイル)の残水が、カビが活動しやすい温度と結びつき、カビの温床になります。
清掃・乾燥を怠ると、冬の暖房開始時にカビの胞子を施設全体に拡散させるリスクを負います。
→ ご自宅のエアコン内部の湿気も、この時期にしっかり乾燥させないとカビの温床になります。
③ 夏の対策後、「管理の優先順位」の変化による警戒心の低下
夏場の集中的なカビ対策や冷房負荷対策を終えると、「もう大丈夫だろう」と警戒心がゆるみがちになります。
このゆるみが、定期的な湿度のチェックや換気システムの点検を疎かにする原因となり、管理の隙を突いたカビ繁殖の「きっかけ」となってしまいます。
→ ご家庭でも、涼しくなって換気を意識しなくなることと共通しています。
④ 壁の中や設備内部に潜むカビの「再始動」
夏の間に壁の奥やダクトの裏側など、普段見えない場所に潜んでいたカビの胞子が、秋になり結露などの水分を得て、一気に活動を再開します。
これらのカビは建材を劣化させ、構造的な被害につながる可能性があるため、注意が必要です。
2. リスク管理に基づいた確実な対策と予防
施設管理においては、事後の清掃よりも、建物の機能を活かした予防と、発生時の確実な殺菌・再発防止が重要です。
① 建物と空調の「カビない仕組み」をつくる
- 空調機の徹底洗浄:暖房シーズン前に、ドレンパン(水受け皿)やフィルターなど、カビが発生しやすい空調機の主要部分を徹底的に洗浄し、専門的な防カビ処理を施してください。
- 換気バランスの調整:建物全体の空気の出入り(換気)のバランスが崩れていないかを確認し、特定の場所に湿気がたまらないように調整することが重要です。
- その他:サーモグラフィ(熱画像)診断などで、建物が冷えやすく、結露の発生が懸念される箇所を事前に見つけ、断熱材を追加するなどの対策(断熱改修)を計画的に行うことも有効です。
★ご自宅の対策のヒント: ご自宅のエアコン内部は必ず乾燥させ、窓枠の断熱対策や、家具と壁の間に隙間を空けて通気を確保しましょう。
② 湿気と温度の「継続的な見張り」
- 湿度・温度の監視:季節を問わず、施設内の特定エリア(水回りや北側、倉庫など)の湿度計を継続的にチェックし、湿度60%未満を保つよう監視を継続してください。
- 初期異変への対応:管理区域で「カビ臭」や「壁の変色」の報告があった場合は、すぐに原因究明と対応を開始し、大規模な汚染に発展するのを防ぎます。
★ご自宅の対策のヒント: ご自宅でも湿度計を設置し、60%を超えないようこまめな換気や除湿剤の交換を心がけましょう。
③ 根本的なカビの除去はプロに任せる
カビが広範囲に及んでいる場合や、壁の内部、空調設備にまで及んでいる場合は、通常の清掃では不十分です。
- 専門業者への早期依頼:カビを根元から殺菌し、胞子を完全に除去し、再発を防ぐための専門的な工法が必要です。初期対応の段階で、専門知識と技術を持ったプロにご相談ください。
- 建材を傷めない工法選定:建物の資産価値を維持するため、対象建材や設備にダメージを与えない、安全で確実な殺菌・防カビ処理技術を選定することが重要です。
◆ 引き続き危機意識を保つことが重要
秋カビの大量繁殖は、「気温が下がったことによる油断」と「建物 / 空調内部の結露」が複合的に絡み合うことで生じます。
施設管理者様におかれましては、この時期こそリスク管理を徹底し、空調設備や構造部の点検・清掃を実施することで、冬に向けて安全で快適な施設環境を維持してください。
また、今回ご紹介した内容はは、ご自宅の環境管理にも応用いただけます。
ご家族の安心と建物の安全を守るため、秋の対策を徹底しましょう。
株式会社JMCPは、プロの皆様の課題解決のため、専門的な調査診断と確実なカビ対策工法を提供しております。
施設のカビ対策についてご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。