〈カビコラム8〉製造施設の異物混入❷ -衛生管理と手法について考える-
◆食の安全を取り巻くHACCPの現状と問題点
衛生意識の高まりは食品工場をはじめ、食品を取り扱 う施設、飲食チェーンにまで広がっています。食の安全 を求めるにあたり、望ましいことではありますが、正し い清掃や除菌作業を実施できているかと不安な事業者も 多いと聞きます。背景として、前号で触れたHACCP(ハ サップ)導入のみならず、新型コロナウイルス対策の衛 生管理などが挙げられます。現状は、清掃作業経験者や 厳格な衛生管理体制を学んだ方には、不十分さを感じる ことが多いのではないでしょうか。
特に食品の微生物汚染について注目すると、大手の食 品製造施設では「持ち込まないこと・増やさないこと・ 除去すること」を考慮し、長年培ってきた衛生管理手法 を活かしつつ改善しており、除菌や異物混入に関して高 いレベルを維持しています。 ただ、異物混入対策においても、日常の衛生管理プロ グラムが盛り込まれており、HACCPを用いた衛生管理 の対策をするには、モニタリング(検証)や継続方法な どが課題といえるでしょう。
一方、中小の食品製造施設や飲食店では、衛生管理や 除菌対策を実践していくには労力が必要になります。洗 剤や除菌剤、道具は何を使用すべきか、どのタイミング でどれくらい時間を費やすべきか。特に飲食店では、接 客などのサービス業務に注力し、生産性を高めることに 主軸を置くため、自分で判断しながら効率的に対策を行 うことは、後回しになります。
◆衛生管理方法が混乱しやすい理由
ある飲食業者の方から聞いた話によると、その方が働 く飲食店では食品に関わる衛生管理と、新型コロナウイ ルスの感染予防対策についての作業や換気方法などの勉 強会を実施し、従業員同士で情報共有する時間を設けて いるそうです。つい先日は、梅雨の時期に向けたカビ対 策について話し合ったそうです。
衛生管理の意識が高い例ですが、その際にある問題が 発生しました。それは、メーカーや商社が推奨する衛生 管理製品の基準や用途が各社で異なるため、どこに何を 使用したらいいのか、作業者が混乱したそうです。急激 な社会情勢の変化によって、衛生管理製品を取り扱う企 業も増えているので、特に除菌剤は、そのセレクトが困 難になるのではないでしょうか。
現場はその中から最良の選択をしたいと考えますが、 一番大事にするべきなのは「現場にあったプランニング」 だと考えます。どこに汚れが付着し、汚れに対してどれ を使い除去すべきなのか。また、どのような微生物汚染 や異物混入の危険性があるかを把握し、それに見合った 時間とコスト、製品を選ぶ。この流れに無理や問題があ ると、衛生意識の維持・継続がままならなくなってしま います。 食品を取り扱う現場では、衛生管理が徹底されるまで には、もう少し混乱が続くかもしれません。
JMCP日本カビ対策プロジェクト 技術研究員 八巻 徹