〈カビコラム5〉安易なカビ取り① 簡単ではないカビ取り作業

いままさに、新型コロナウイルスが中国を中心に猛威をふるっています。毎年のように流行するインフルエンザウイルスや致死率が高くアフリカで甚大な被害をもたらしたエボラウイルスなど、人から人への感染を伴う感染力の高いウイルスは、パンデミック(世界的流行)を引き起こすことから、日々対応策の研究が進んでいます。
 それに対して真菌は、人から人の感染は確認されておらず、繁殖スピードも経日的にゆっくりで、人的被害は確認されつつも対策は遅れているようにも感じます。これまで、カビの種類や生態について触れてきましたが、実際にはどのように対処していけばいいのでしょうか。今回から、現在のカビ取り作業、対策がもたらす危険性に触れていきます。
◆カビ取り作業のリスクアセスメント
 カビ対策は一般家庭においても、事業場においても自身で行えるという風潮があります。「施工は素人でも対応できる」という認識が当たり前になっているのではないでしょうか。一般に市販されている製品は、取り扱いが簡単で、便利なのですが、危険性も持ち合わせていることを認識しなければなりません。
 まず1つ目は、カビ取り剤の主流が塩素系漂白剤を含むため、有害物質が生成される恐れがあることです。「混ぜるな危険」の文言は定着していますが、未だに医療機関に健康被害を訴える例は絶えないのが現実です。その字の通り、混合危険物質を直接混ぜる人はいないと思いますが、「気づかずに混ざってしまう」事故例が多く存在しているようです。
 例えば、「少し窓を開けて、塩素系漂白剤の入ったカビ取り剤を撒いたところ気分が悪くなった」という事例。このケースでは、浴室の床に頑固な汚れが発生していたため、トイレ清掃用の酸性洗剤を床に使用しました。流す水量が少なく、排水トラップに溜まっていました。ここに、塩素系漂白剤が流れ込み、混合した可能性が高いと考えられます。これは、一歩間違えれば大事故になりかねないケースです。
 カビ取り業者としても、事故を防ぐためには、お客様の使用洗剤などのヒアリングが重要になります。
◆人体・建材への影響も注意!
 2つ目は、数多く報告されている目の刺激です。高所にカビ取り剤を吹きかけて飛散した例や、密室での作業で目に刺激を受けるなど、作業の仕方に気をつけ、必要に応じて保護具等も着用しなければなりません。
 3つ目は、脱色作用です。カビの色を消す効果が優れている(漂白効果が高い)商品もありますが、思わぬところを脱色するというリスクを抱えます。衣類などを脱色させてしまった、そういった経験もあるのではないでしょうか。だからといって、衣服ばかり気にしていても、カビ取り剤を拭き取った使用済みタオルを放置すると、接触したものを脱色させてしまう可能性があります。また、対象外の建材を脱色してしまったなどなど……。
 一度脱色してしまったものは、元には戻せませんので注意が必要です。
 市販されている製品とはいえ、あくまで化学物質が混合されたものであることを再確認しましょう。そして、製品の使用上の注意に沿って取り扱うことが必要です。