〈カビコラム9〉製造施設の異物混入❸-日々の点検と清掃の重要性-
◆清掃範囲外で起こるカビの繁殖
食品の取り扱い施設では、異物混入を防ぐために日々 清掃を行っています。ただ、自社で衛生管理を行うと大 変な労力を要するため、多くの施設では外部委託で清掃 を行っています。衛生管理を意識した清掃をアウトソー シングすることで、食品製造施設は生産業務に注力でき、 仕上がりや精度、生産効率も上がるため、メリットが非 常に大きいと考えられます。 しかし、このアウトソース以外の清掃範囲の部分で、 施設の環境が劣悪な状況となり、それが原因で清潔区域 に被害が出る場合などもあるのです。 まず、食品製造施設では、製品が梱包される前段階の 加工室や製造室が、異物混入のリスクが高く重点的な部 分として挙げられます。当然、清潔さを保たなければな らない場所ですが、清掃を委託する範囲は製造ラインの 周りに注力されがちです。
ですが、その部分以外の〝実は汚染が広がるリスクを 持つ場所〟が見逃されることが多々あります。代表的な 場所は、天井裏(写真)や空調のダクト部分などです。
この手薄な場所が長期間放置され、ほこりや塵などが 溜まり、湿気を帯びる箇所ではカビが繁殖し、時期によっ ては虫の発生などのトラブルを生み出します。ほこりや 塵に混じってカビが発見された際は、早急に対処しなけ ればなりません。
また、こういった状況にならないためにも、定期的な チェックは必要です。ただ、委託範囲外の場合であれば、 スポット契約のチャンスでもあります。
◆見えないところで衛生環境が悪化
カビは経時的に繁殖するため、気づいたときには大量 発生していることが多くあります。胞子をまとい、空気 の流れで飛散し、清潔だった空間まで浸食していくため、 発生源はどこなのか? 発生原因や増殖原因は何か? など、時間が経つにつれて特定が困難になります。
カビのほかにも虫は工場内を徘徊し、食品残渣や食料 品の粉塵だけではなく、増殖したカビや酵母などを捕食 する種類も存在します。虫がエサを捕食する際に付着し たカビ菌などが、虫が動き回ることにより、食品工場内 に広げてしまうこともあります。当然、こうしたことは、 清潔空間でも起こり得ますし、繁殖力が強い虫だと爆発 的に増えることもあります。 ほこりや塵、カビ、虫、どれもが存在する危険性を考 え、早めに対応しましょう。
製造施設以外に、食品加工場外にある原料倉庫や備品 倉庫はもちろん、細かい部位だと配管周り、壁裏、天井 裏、ダクト周りなどは、できれば継続的に清掃と点検を 心がけてください。 定期的なチェックを行い、適正に清掃や除菌を行わな ければ、知らず知らずのうちに衛生環境は悪化していき ます。未然に防ぐためには、原因究明や根本的解決が困 難になる前に、対処していくことが必要です。
JMCP日本カビ対策プロジェクト 技術研究員 八巻 徹