〈カビコラム18〉汚れに合わせた清掃方法① −清掃の達成度−
清掃の目的意識の共有
事業場内をカビや細菌などから守っていくためには、そこにある汚れに正しく対応しなければいけません。
しかし事業場では、毎日行われるがゆえに清掃の重要度や、清掃に対する意識が薄れていく現状を目にします。
清掃の意図・目的を尋ねたとき、
「今までこうしてきたからやっている」
という回答が返ってくることが多々あります。
優先されるのは生産ですが、事業場での事故リスクを下げるために清掃に注目してみると、実は改善点が多いことがわかります。
今回は大前提となる「清掃の目的意識の共有」の重要性について解説していきたいと思います。
◆なぜ清掃が重要なのか?
現場で一番の課題となっているのが「清掃する目的の共有」だと思われます。
清掃の達成度は事業場によって異なり、“目の前のゴミを取り払うことで達成できる現場”から、”手あかひとつ残すことが許されない現場”まで、大きく差があります。
管理者が想定している清掃の達成度と、施工者の考える達成度に大きくズレがある場合、それが大きなトラブルの要因になるかもしれません。
食品取り扱い施設においては、清掃は異物混入対策の一環としても行われています。
そこでは、「異物を取り除くこと」(日々のゴミや目に見える付着物を除去する)はもちろん、「異物を育てないこと」が清掃達成のための大前提になります。
そのためには、表面の汚れを剥がし取るだけでは不十分であり、躯体の凹凸や細かな傷や隙間に入り込んだ目に見えない油分や食品残渣を除去し、細菌や真菌などの微生物の栄養源を断つ必要があります。
そしてまた、作業品質の向上のため、洗浄剤の選定においては、懸命に擦らないと落とせないようなものではなく、付着している汚れを想定し、それに見合ったものへと選定し直すことも求められます。
食品残渣や油分の付着が、のちの大きなトラブルの要因となり得るということを認識しているかどうかで、大きく成果が変わってきます。
施工者に「何のために清掃しているのか」「どこに注意しているのか」と問いかけると、沈黙され答えを持ち合わせていないことがあります。
このような環境下では、十分な清掃が行われないことも懸念されるため、まずは施工者が不具合の原因や改善点に気づけるような環境を作ることが望ましいでしょう。
◆管理者と施工者が目的意識を共有する
現在は、事業場において食の衛生における管理水準も向上していますが、その一方でコストと時間の壁に悩まされていることでしょう。
管理者は、コストと時間に制限がある中では、現在行っていることや、今までやってきたことが基準となり、手法を変えずに効率化や作業品質の向上を求めがちです。
そうすると施工する側に無理が生じてしまい、望ましい結果には辿りつかないことが考えられます。
反対に、管理水準と同時に清掃技術も高まる中で、質やサービスにこだわる施工者も数多く存在しています。
管理者と施工者が目的意識を共有し、互いの状況を理解し歩み寄る姿勢を持つことが、現場における最適で効率的な作業環境を作り上げることになるのではないでしょうか。