〈カビコラム10〉安易なカビ取り② カビ取り剤の効果とは?

カビ取り剤は多くの種類があります。各メーカーで技術開発が進み、競争が行われています。ですが、前回も触れたように、各商品に対して利用者が正しく使用しなければ効果を発揮できず、危険性までも伴うものになってしまいます。

今回は、カビ取り剤を使った作業を振り返りたいと思います。

 

◆本当にカビを除去できているのか?

まずは、カビ取りを行った際に、カビを根絶できているのでしょうか。各メーカーのカビ取り剤は、殺菌効果はもちろん、検証をもとに有効成分を配合しています。 ただ、清掃対象面にカビだけが存在していると考えるのは難しいと思います。

生活空間のなかで、お風呂場を例に挙げると、壁面にはカビが確認できますが、洗い場には、石鹸カスや、皮脂など多くの汚れが存在しています。この汚れに埋もれたカビたちに、除去剤が届かなければ、すぐに増殖してしまうでしょう。タイルの目地といった洗浄をすることが面倒な場所ほど、普段の汚れが蓄積しているものです。 その下で、生存したカビがまたはびこるときを待っていることは想像できます。

また、目につく黒い部分のみ局部的にカビ取りを行うことは、根本的な是正にはつながりません。カビの見えない空間を維持するには、まだ若く、透明なカビを根絶し、全面的に対処しなければなりません。

 

 

◆カビ取り剤の浸け置き時間

ほとんどのカビ取り剤が、使用方法に「浸け置くと効果的」「時間を置いてください」と書かれていますが、 これはなぜでしょうか?

各メーカーによって殺菌作用は異なりますが、これは菌の分解時間が考えられます。 真菌のなかでも糸状菌は、一つひとつ核を持った約5 〜10μmほどの小さな真菌たちが糸状につながっていて、それが束、網状になり目にみえる状態で す。硬い細胞壁に覆われたものすごい数の真菌がいます ので、これを適切に対処するのであれば、分解を行うのに相応の時間が必要です。

また、なかには漂白作用をうたっている製品も見受けられます。カビは生育すると色づき始め、ここには色素が存在しますので、美観を回復するためにこの色を漂白する時間も必要と考えられます。

 

以上のことを考慮して、カビ取り剤を有効に使用したとしても、それでも除去できないカビが存在します。最近では、そうした薬剤に耐性を持つカビも明らかになってきました。菌類は生物であることから、猛威を奮っているコロナウイルスのように、未知の存在、未知の進化もこれから発見されてくるかもしれません。

 

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安易なカビ取り① 簡単ではないカビ取り作業