〈カビコラム11〉安易なカビ取り③ 薬剤に耐性を持つカビ

前回までカビ取り剤を使用する使用者に目線を合わせてきました。用法用量を適切に守り使用しない限りは、カビを根本から除去することが難しいとわかりました。ここからは、カビに目線を合わせてカビ取り作業を振り返ります。

 

◆次亜塩素酸ナトリウムに耐性を持つカビ

昨今、食品取り扱い施設などに訪問させていただき実感するのは、やはりカビ対策と言えば次亜塩素酸ナトリウムという事業場が多いということです。しかしながら、「使用していてもカビが消えない」「再発が早くなった」などの理由で調査依頼が入ります。そこで思うのは「カビ対策=次亜塩素酸ナトリウム」なのかという疑問です。 次亜塩素酸ナトリウムは、殺菌剤としての効果は優秀 あり、真菌にも効果を発揮することは確認されています。また、使用方法を守れば人体や環境への影響を低く抑えることができるため、広く使用されているのだと考えられます。

問題はここからです。では、なぜ消えなくなってしまうのでしょうか。

毎日、事業場で厳格な管理のもと、同じ液剤を使用し、用法用量を守り施工しているのに消えなくなる。施工者の手抜かりと思われがちですが、それは間違いかもしれません。カビが変わっているのです。

 

◆中途半端な作業が逆にカビを増やす!?

カビによる健康被害の真菌症、その治療のなかで真菌が薬剤に耐性を持つことがわかってきています。真菌も細菌類などと同様、耐性を持つ可能性を捨てることはできないのです。現在、一般の家庭内で目にするカビを除去するためのカビ取り剤、次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒剤に対しての耐性というものは確認できていません。ただ、別のかたちで対応力を持ち始めるケースに注目しています。

カビの細胞膜は多糖と脂質で成り立っています。一見、そこまで強固な壁ではなく感じますが、多糖体により剛性を与えられていることがわかっています。中途半端なカビ取りで耐え抜いた真菌たちや、長く放置した真菌たちは、多糖体を多く放出し、カビ取り剤へのガードを高めているということが示唆されています。強固な壁を身につけた真菌には、洗剤や消毒剤が届かなくなる可能性があるのです。

つまり、中途半端なカビ取り作業で、消すことのできないカビをどんどん増やしてしまうことにも成りかねないのです。そのことを改めて認識し、本質的な知識を持ってカビと向き合わなければいけません。

 

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安易なカビ取り① 簡単ではないカビ取り作業

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安易なカビ取り② カビ取り剤の効果とは?