〈カビコラム12〉取りきれないカビ -想定外に備えた対処と提案を!
カビ取り作業を始めたころは、あらゆる種類のカビ取り剤や消毒剤を使用しても、まったく消えないという経験がありました。カビ取り業者のなかには、現場検証をせずに「きれいになる」と説明し、施工を行ってから取れないカビの存在に気づき、あらゆる手段を試しても落とせず、部材の交換や色を被せるなどの処理を急遽行うということが多くあるそうです。
今回は、そんな消えないカビについて検証した結果を書いていきます。
◆カビは消えても、色が消えない
まず、カビが消えないのは、室内や室外、躯体や部材などの環境によって生息するカビの種類が違うため、洗浄剤や消毒剤が有効でないのではないかと考え検証を続けました。結果として、それは誤りでした。採取したカビは、カビ取り剤をしっかりと当てることができれば除去できます。しかし、検証の末わかったのは、躯体により除去の効率と結果が大きく変わることでした。
例として、水回りのコーキングから採取した黒カビをサブロー寒天培地に採取し、生育させました。
生育後のカビを採取し、次亜塩素酸ナトリウム0.5%混合調整したカビ取り剤にて処理をしたところ、目視では確認できないほどに消すことができました。
しかし、実際にコーキングに生息しているカビは、同様のカビ取り剤を使用しても、消し去ることができませんでした。重ねてカビ取り剤のつけ置きや、躯体を壊さない程度の表面へのブラッシングなども行いましたが、除去しきれない結果となりました。
そこで、表面的な検査となりますが、色の消えないコーキング面にATP検査(A3法)を行った結果、基準値を下回る30RLUと非常に優秀な数値が検出されました。
つまり、ATP検査およびパッチテストの検査結果は、表面に色づきは確認できるものの「表面にカビは存在していない」という結果になったのです。
◆色素の存在をお客様に伝え提案を用意
さらなる状況の検証は必要となりますが、内部への侵食によりカビ取り剤が真菌に届いていない可能性も否定できません。
最後に高い濃度での塩素系漂白剤につけ置き処理をしたところ、目立たなくなる程度に薄くすることができました。ただ、漂白作業は想定外の色抜けや躯体劣化、臭いの発生、作業時間も大幅にかかることもあり、リスクを伴う作業と言えます。試験では、目立たなくなるまで除去を行うことができましたが、色が消しきれないケースも起こり得るのです。
実際の施工では、さまざまな工夫が必要であることと、色素の存在をお客様にも認識してもらう必要があります。
長く放置され、劣悪な環境ではびこったカビは、色素を持ち、固着していることになります。洗浄前にこのようなケースを想定し、素材の交換なども視野に入れた提案を検討すること、ならびに専門業者が知識を身につけこのような重症にならないような日常の管理手法をお伝いしていくことが、お客様にとっての利益になるのではないでしょうか。